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【カーボンクレジットを学ぼう】第4章-2 日本のルール ― J-クレジットとJCMは「国内と海外の二刀流」

第4章-2:日本のルール ― J-クレジットとJCMは「国内と海外の二刀流」

日本には、クレジットに関する代表的な仕組みが2つあります。

  • J-クレジット制度(国内)
  • JCM(二国間クレジットメカニズム)(海外協力)

日本は政府として国内の削減だけでは目標の達成が難しいことと、東南アジアを中心とした新興国・発展途上国(グローバルサウス)との連携強化を主眼に、この2つの仕組みを運用しています。中高生向けに言うと、日本は「国内の試合」だけでなく「国際大会」にも出ている、二刀流のような立ち位置です。 )

1) J-クレジット制度:日本の中で削減を証明する仕組み

J-クレジットは、日本国内で

  • 省エネ(設備更新、効率化)
  • 再エネ(太陽光など)
  • 農業(稲作の改善や農業廃棄物の活用など)
  • 森林の吸収(間伐や植林、保全)

といった取り組みで減らしたCO₂を、クレジットとして認める制度です。

例えば、学校や工場でLEDに替えて電気が減れば、その分が削減になります。
森林なら「森を適切に手入れして、吸収力を維持・回復させる」ことでクレジットが生まれます。

ここで大事なのは、J-クレジットは 環境省・経済産業省・農水省という国の機関が制度として運用しており、手続きや審査のルールが比較的はっきりしています。また日本国内の活動に限定しているため、様々な整備されたデータを基盤に制度がつくられているため、海外の制度に比べて、簡便な仕組みになっていることも特徴です。国が運営しているので、カーボンクレジットを初めて扱う人にも安心感の高い仕組みとも言えますね。

2) 地域と相性がいい:森・自治体・企業がつながる

J-クレジットは地方や郊外と特に相性がいいです。
なぜなら森林が多い地域では、森林整備が「環境」だけでなく「地域の仕事」になるからです。弱い木を切り、強い木に日光がよりあたり栄養が届くようにする間伐という森林整備を行うことで、森林の吸収が増えるので、間伐を行うことは環境的にメリットがあります。それはカーボンクレジットを生み出すことにつながるので、新たな収入が林業にもたらされることになります。そうすると、さらに多くの地域でこの間伐が行われるという好循環が生まれます。現在の日本では、林業は海外の安い木材の輸入に押され、なかなか間伐まで手が回らないのです。さらに、追加的に木を切り出すことになるので、あらたな燃料や材料の供給にもつながります。

また稲作が盛んな地域では、従来の稲作を変更し水田の水を抜く期間(中干しと言います)を延長することでメタンを削減し、クレジット化することが可能できるので、農家さんの副収入になります。また郊外の一戸建てが多い地域であれば、屋根に太陽光パネルを設置して蓄電池を導入することが出来ますし、(特に2台目の車であれば)電気自動車を導入することも常に充電が出来るため容易です(マンションだと難しいのです)。

例えば、家庭の太陽光・蓄電池であれば、

①太陽光と蓄電池の導入やその電気を上手に活用する新しいビジネスが地方で生まれる
②災害時にも電気の供給が継続でき、災害に強い町に近づく
③電気を作る元となる原油やガスの値段が将来突発的に上がっても、影響を受けなくなる

といった具合です。 皆さんも、環境に優しいだけでなく、良いことした分だけお小遣いが増えれば、もっと環境に良いことを進めたい気分になりますよね。

3) JCM:日本が海外と協力して削減する仕組み

JCMは、日本と相手国が協力して排出削減を行い、その成果を分け合う仕組みです。
東南アジアを中心とした新興国・発展途上国と協力し、日本の省エネ技術や再エネ技術、農業・森林保全技術を導入して削減を進めます。

例えば、相手国の工場に高効率設備を導入し、燃料や電気の使用量を下げる。そこで生まれた削減量の一部を、取り決めに従って日本側の成果としても扱える、という考え方です。

ここが重要で、JCMは「日本だけ得をする」ための仕組みではなく、

  • 相手国の企業等はカーボンクレジットでの収益等を活用して先端設備を導入し、CO2排出とエネルギーコストを下げることが出来る
  • 日本は、日本の技術が現地に導入・普及されるとともに、国際貢献と気候変動目標達成に近づく
  • 世界全体で考えてみると、日本など先進国で最先端の技術を導入するよりも、途上国の効率の悪い機器が置き換わるため、低コストで効果的なCO2削減が実現できる

という協力構造が制度に設計されています。

4) 日本の課題:制度を「使える人」を増やす

日本の仕組みは整ってきましたが、課題もあります。
特に、中小企業や個人にとっては「手続きが難しい」「費用が高い」と感じる場面があります。
だからこそデジタル化やプログラム型(まとめて申請)の考え方が重要になります。この辺りは5章で説明したいと思います。

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